コーチングとは?店舗スタッフが自分で考えて動けるようにする店長の関わり方

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店舗でスタッフを育成していると、

「どこまで教えればいいのだろう」

「自分で考えてもらいたいけれど、なかなか答えが出てこない」

「質問することがコーチングなのだろうか」

と迷うことがあります。

コーチングという言葉から、「質問して本人から答えを引き出す方法」をイメージする人もいるかもしれません。

しかし、店舗マネジメントで考えるなら、質問すること自体が目的ではありません。

私が考えるコーチングとは、

店長が正解を教えることではなく、質問と対話を通して、スタッフ自身が考え、自分なりの答えや次の行動を見つけられるよう支援すること

です。

ただし、「店長は答えを教えてはいけない」という意味でもありません。

スタッフが自分で考えるためには、知識や経験、判断材料が必要です。

考えるための材料を持っているなら、質問して考えてもらう。

材料が足りないなら、必要なことを教える。

その中間なら、質問しながら必要な知識や方法を伝える。

大切なのは、コーチングとティーチングのどちらか一方に決めることではありません。

そのスタッフが、そのテーマについてどこまで自分で考えられる状態なのかを見ることだと私は考えています。

前回の記事では、フィードバックについて考えました。

フィードバックでは、スタッフの行動や結果について必要な情報を返し、本人が現在地を理解して次の行動につなげていきます。

今回はそこからもう一歩進み、本人自身に考えてもらう「コーチング」を、店舗での実体験も交えながら考えていきます。


目次

コーチングとは?スタッフ自身が考えて行動するための支援

コーチングは「正解を教えること」ではない

店舗では、店長のほうが経験も知識も多いことがあります。

そのため、スタッフから相談されたとき、

「こうすればいいよ」

「次はこうして」

と答えを伝えたほうが早い場面もあります。

もちろん、すぐに答えを伝える必要がある場面もあります。

安全に関わることや、会社・店舗として決まっているルール、本人がまだ知らない基本業務などは、曖昧にせず教える必要があります。

一方で、本人がすでに考えるための知識や経験を持っていることまで、店長が毎回答えを出してしまうとどうでしょうか。

スタッフは、店長から答えをもらうことはできても、

「自分はどう考えるか」

「次はどうするか」

を考える機会が少なくなります。

そこで役立つのがコーチングです。

すぐに正解を渡すのではなく、

「あなたはどう思う?」

「何が原因だったと思う?」

「次に同じことが起きたら、どうしたい?」

と対話しながら、本人自身に考えてもらいます。

店長が答えを持っていたとしても、あえて少し待つ。

その時間が、スタッフ自身が考える機会になります。

「質問すること」そのものが目的ではない

ここで注意したいのは、

コーチング=質問すること

ではないという点です。

質問をたくさんすれば、コーチングになるわけではありません。

大切なのは、質問や対話を通して、本人が何を考えているのかを知ることです。

そして、

  • どこまで理解しているのか
  • 何につまずいているのか
  • どんな経験を持っているのか
  • 自分で判断できる材料を持っているのか

を見ながら関わり方を変えていきます。

質問してみた結果、本人が十分に考えられる状態なら、そのまま考えてもらえばよいでしょう。

反対に、知識が足りないことが分かったなら、そこで必要なことを教えればよいのです。

コーチングは、店長が質問をするためのテクニックというより、本人が自分で考えられる状態をつくるための関わり方だと考えると分かりやすくなります。

そのためには、店長が一方的に話すのではなく、相手の考えを受け取りながら認識をそろえるコミュニケーションが土台になります。


店舗マネジメントでコーチングが必要な理由

店長がいつも答えを出しているとスタッフは考える機会を失う

店舗では、判断を急ぐ場面がたくさんあります。

忙しいときほど、店長が、

「これをやって」

「次はこれ」

「こうすればいい」

と指示したほうが早く店舗を動かせます。

状況によっては、それが必要です。

ただ、すべての場面で店長が答えを出し続けていると、スタッフは自分で判断する経験を積みにくくなります。

何か起きるたびに、

「店長、どうしたらいいですか?」

と確認しなければ動けない状態になれば、店長自身の負担も増えていきます。

だからこそ、すぐに答えを出す必要がない場面では、

「あなたはどうしたらいいと思う?」

と一度返してみることも大切です。

自分で考え、自分で決める経験がスタッフの成長につながる

スタッフが成長するためには、知識を増やすだけでなく、その知識を使って判断する経験も必要です。

例えば、同じ接客マニュアルを理解していても、すべてのお客様に同じ対応ができるわけではありません。

相手の様子を見ながら、

「今は声をかけたほうがよいのか」

「少し待ったほうがよいのか」

「どの商品を提案するのか」

を考える場面があります。

こうした判断は、答えを覚えるだけでは身につきにくいものです。

自分で考える。

自分で選ぶ。

実際にやってみる。

そして振り返る。

この経験を重ねることが、少しずつ自分で判断して行動する力につながっていきます。

スタッフが自分で考えられるようになったら、次に必要なのは、実際に仕事や判断を任せて経験できる範囲を広げることです。

店長が「何を、どこまで任せるか」を考える権限委譲については、こちらの記事で詳しく解説しています。

コーチングの目的は「正解を言わせること」ではない

店長がすでに答えを持っていると、無意識にその答えをスタッフに言わせようとしてしまうことがあります。

「こういう場合は、もっとお客様に声をかけたほうがいいと思わない?」

これも形としては質問です。

しかし、実際には店長が求めている答えがほぼ決まっています。

これでは、スタッフが考えるというより、店長の正解を当てる時間になってしまいます。

コーチングで知りたいのは、

「店長と同じ答えを言えるか」

ではありません。

本人は何を見ていたのか。

どう考えてその行動を選んだのか。

ほかにどんな選択肢があると思っているのか。

そうした考えを聞いたうえで、一緒に次の行動を考えていきます。


コーチングとティーチングの違い|「教える」と「考えてもらう」

ティーチングは知識や方法を教える

ティーチングは、必要な知識や方法を相手に教える関わり方です。

例えば、新しく入ったスタッフがレジ操作を知らないのであれば、操作方法を教える必要があります。

知らないことを、

「どう操作すればいいと思う?」

と考えてもらっても、答えを出すための材料がありません。

業務の基本、ルール、商品知識など、まず知っておかなければ考えることが難しいものについては、ティーチングが必要です。

コーチングは質問と対話で考えを引き出す

一方、本人がすでに知識や経験を持っている場合は、すぐに答えを教えるのではなく、質問によって考えてもらうことができます。

「今回、うまくいったところはどこだと思う?」

「何が原因だったと思う?」

「ほかに方法はありそう?」

「次はどうしてみたい?」

こうした問いを通して、本人が持っている知識や経験を整理し、自分なりの答えを見つけていきます。

大切なのはどちらか一方ではなく使い分けること

私は、コーチングとティーチングを対立するものだとは考えていません。

実際の店舗では、その両方が必要です。

以前、とても声が小さい新人スタッフがいました。

ただ、

「もっと大きな声を出して」

と伝えるだけでは、表面的な行動を直すだけになってしまいます。

そこで私は、

「もう少し元気な声を出していこうか。お客様に聞こえないよ。何か悩んでる?どこが不安?」

と聞きました。

すると、

「自信がなくて……」

という答えが返ってきました。

そこでさらに、

「どの部分が自信ない? お客様との会話? 商品知識?」

と聞くと、

商品のことを聞かれたときに何を質問されるか不安で、正しく答えられたかどうかも気になってしまう、という話が出てきました。

ここまで対話したことで、

声が小さい
↓
自信がない
↓
商品について質問されるのが不安
↓
商品知識に自信がない

という背景が見えてきました。

この場面では、質問することに意味がありました。

表面に見えていた「声が小さい」という行動だけではなく、本人が何に困っているのかを確認できたからです。

しかし、原因が商品知識不足だと分かったあとまで、

「では、あなたはどうしたらいいと思う?」

と質問し続ける必要はないと私は考えています。

そこで私は、

「じゃあ、徹底的に商品知識を強化しよう」

と伝えました。

新人スタッフには、まだ十分な知識や経験、判断材料がありません。

必要な材料を持っていない状態で、何でも本人に考えさせればよいわけではありません。

この経験から私は、

考える材料を持っている
→ 質問して考えてもらう

考える材料が足りない
→ 必要なことを教える

その中間
→ 質問しながら、必要な知識や方法は教える

という使い分けが大切だと考えるようになりました。

重要なのは、「コーチングを使うか、ティーチングを使うか」を先に決めることではありません。

まず本人の状態を見ることです。


フィードバックとコーチングの違い

フィードバックは店長から具体的な情報を返す

フィードバックとコーチングは、スタッフ育成のなかで一緒に使われることがあります。

ただし、役割には違いがあります。

フィードバックは、

店長から、本人の行動や結果について必要な情報を返すこと

です。

例えば、

「今の接客では、お客様の話を最後まで聞いてから商品を提案できていたね」

「今日はストック作業に時間がかかって、次の休憩開始が遅れていたよ」

など、店長が見た具体的な行動や事実を本人へ返します。

本人が自分では気づいていないことも、フィードバックによって現在地を理解しやすくなります。

コーチングは本人の中から考えを引き出す

一方、コーチングでは、

「自分ではどうだったと思う?」

「何がうまくいったと思う?」

「次に変えるとしたら、何を変える?」

と問いかけます。

つまり、

フィードバック=店長から情報を返す

コーチング=質問や対話によって本人の考えを引き出す

という違いがあります。

フィードバックのあとにコーチングすることもできる

ただし、実際の店舗マネジメントでは、両者を完全に分ける必要はありません。

例えば、

フィードバックする
↓
本人に考えてもらう
↓
次の行動を一緒に考える

という使い方もできます。

「今日は、お客様へ声をかける回数が昨日より増えていたよ」

と具体的な変化をフィードバックしたあと、

「自分では何を変えたと思う?」

と聞けば、そこからコーチングにつなげることができます。

前回の記事では、フィードバックを「できていないことを指摘すること」だけでなく、行動や結果について必要な情報を返し、現在地を理解して次の行動につなげるものとして整理しました。

コーチングとの違いをより分かりやすくするためにも、先にフィードバックの考え方を確認しておくと、両者を店舗で使い分けやすくなります。


店舗でコーチングが役立つ場面

接客後に自分の行動を振り返ってもらう

接客が終わったあと、店長がすぐに評価を伝えるだけでなく、

「自分ではどうだった?」

「うまくいったと思うところは?」

「もう一度やるなら、何を変える?」

と振り返ってもらうことができます。

本人が自分の行動を振り返ることで、店長から言われる前に気づくこともあります。

もちろん、本人から見えていないことがあれば、そのあとで店長がフィードバックすればよいのです。

売上やKPIから課題を考えてもらう

売上やKPIは、スタッフを評価するためだけの数字ではありません。

数字を材料にして、

「今月の数字を見て、どこに変化があると思う?」

「なぜこのKPIが変わったと思う?」

「現場の行動で思い当たることはある?」

と考えてもらうこともできます。

数字だけで答えを決めず、実際の接客や行動と結びつけて考えることが大切です。

スタッフの数字を見るときも、KPIだけで良し悪しを判断するのではなく、その背景にある行動や状況まで確認することが大切です。個人KPIの見方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

目標達成に向けた行動を考えてもらう

目標を店長が決めるだけではなく、

「この目標を達成するために、今週は何をする?」

「自分が変えられる行動は何だと思う?」

と本人に考えてもらうこともできます。

目標を「言われた数字」で終わらせず、自分の日々の行動まで落とし込むための対話です。

業務改善や問題解決の方法を考えてもらう

店舗で問題が起きたときも、店長がすべて解決策を決める必要はありません。

考える材料を持っているスタッフであれば、

「何が原因だと思う?」

「今のやり方で変えられそうなところは?」

「ほかに方法はある?」

と問いかけることができます。

特に、実際にその業務を担当しているスタッフだからこそ見えていることもあります。

店長が答えを出す前に、一度現場の考えを聞いてみる。

それもコーチングを店舗運営に取り入れる方法の一つです。


店長がスタッフへコーチングするときの基本的な流れ

1.状況や課題を整理する

最初に、

「何について考えるのか」

を整理します。

話題が曖昧なまま質問を続けても、本人は何を考えればよいのか分かりません。

「今日の接客について振り返ってみよう」

「今月の目標について考えてみよう」

など、まずテーマをそろえます。

2.質問して本人の考えを聞く

次に、本人がどう考えているのかを聞きます。

ここでは、店長がすぐに評価や結論を入れないことも大切です。

「自分ではどうだった?」

「何が起きていたと思う?」

と聞き、まず本人が見ている状況を知ります。

3.本人の言葉で整理してもらう

話しているうちに、本人自身の考えが整理されていくことがあります。

店長は必要に応じて、

「つまり、○○ということ?」

「一番気になっているのはどこ?」

と確認しながら、本人が自分の言葉で整理できるよう支えます。

4.選択肢を考えてもらう

状況が整理できたら、

「ほかにどんな方法がありそう?」

「もう一度やるなら、何ができる?」

と選択肢を広げます。

最初に出た答えだけで決めず、複数の方法を考えることで、本人がより納得できる行動を選びやすくなります。

5.次の行動を本人に決めてもらう

最後は、

「では、次は何をする?」

と具体的な行動へ落とします。

考えただけで終わらず、次に何をするのかまで決めることが重要です。

必要であれば、店長側から支援できることも確認します。

6.実践したあとに振り返る

一度決めたら終わりではありません。

実際にやってみたあと、

「やってみてどうだった?」

「うまくいったところは?」

「次は何を変える?」

ともう一度振り返ります。

この流れは、コーチングで知られているGROWという考え方とも重なります。

GROWは大きく、Goal(目標)、Reality(現状)、Options(選択肢)、Will/Way Forward(実行すること)という流れで対話を整理するフレームワークです。

ただし、店舗で毎回この順番どおりに質問する必要はありません。

大切なのは型を守ることではなく、

今どうなっているのかを整理し、選択肢を考え、次の行動につなげること

です。


答えを教えず、本人に考えてもらった店長との対話

ここまでの話を、私が実際に経験した場面から考えてみます。

感情のコントロールを課題としていた店長から相談を受けたことがあります。

売場が非常に混雑していたとき、新人スタッフに対して、

「今はそれより、こっちを先にやってほしい。優先順位考えて!」

というように、きつく言ってしまったそうです。

本人は少し反省しながら、

「怒ったらダメだと思っていたけれど、あまりにも忙しくて店舗が回らず、思わず言ってしまった」

と話していました。

そして、

「言わないといけない。でも怒ってもダメ。私はどうしたら良かったのでしょう」

と落ち込んでいました。

ここで、優先順位を伝えたこと自体が間違っていたわけではありません。

混雑して店舗が回っていないのであれば、店長として優先順位を伝える必要があります。

ただ私は、

「こう言えば良かったんじゃない?」

と最初から答えを伝えるのではなく、本人に考えてもらうことにしました。

最初に聞いたのが、

「自分が新人スタッフだった時、どうだった?」

という質問です。

注意した内容そのものは間違っていない。

でも、その新人スタッフはサボっていたわけではなく、仕事をしてくれていた。

そこで、

「自分が新人スタッフだった時、ほかにもっとやらないといけないことがあるって分かってた?」

と聞きました。

すると、

「分からないです。分かってたら、やります……」

という答えが返ってきました。

ここで本人自身が、

新人スタッフは優先順位を無視していたのではなく、まだその優先順位を知らなかったのかもしれない

ということに気づいていきました。

さらに、自分が新人だった頃、知らないことを頭ごなしに怒られた経験がなかったかを振り返ってもらいました。

本人にも、その経験がありました。

自分では必要だと思って仕事をしていたのに怒られ、

「やらないと誰もやらないから私がやったのに」

と腹が立った経験があったそうです。

そこで、もう一つ聞きました。

「じゃあ、どうしたら良かったと思う?」

そして、

「自分が新人スタッフだった時、店長にどう言ってもらったら腹が立たなかったと思う?」

と考えてもらいました。

すると本人から、

「頭ごなしに怒るんじゃなくて、『それもやらないといけないんだけど、今はこっちをやってもらえるかな』とか言ってもらったら、素直に受け止めたと思います……」

という答えが出てきました。

そこで私は、今やってくれている仕事に対してまず、

「ありがとう。それもやらないといけないんだけど、こっち手伝ってくれる?」

という伝え方だったら、お互いに違った受け止め方になったかもしれない、という話をしました。

この経験で大切だったのは、私が最初から正解を教えなかったことです。

質問する
↓
自分の経験を振り返る
↓
相手の立場に気づく
↓
自分の言葉で整理する
↓
次の関わり方を自分で考える

という流れになりました。

私はこの経験から、コーチングでは「正しい答えを教えないこと」が重要なのではなく、本人がすでに持っている経験や知識を使って、自分で答えにたどり着ける場面では、その機会をつくることが大切なのではないかと考えるようになりました。

また、この場面で考えたいのは、「感情を出してはいけない」「怒る店長はダメ」ということでもありません。

店舗が混雑しているなかで、優先順位を伝える必要はありました。

課題は「何を伝えたか」だけではなく、

相手が受け止め、次の行動につなげられるように、どう伝えるか

という部分にもあります。

店長も常に完璧な対応ができるわけではありません。

うまくいかなかった場面を振り返り、次はどうするかを考える。

これはスタッフだけではなく、店長自身の成長にも必要なことだと思います。


店長が使いやすいコーチングの質問例

コーチングでは、質問の数よりも「何のために聞くのか」が大切です。

現状を整理する質問

現状を整理するときは、本人が今の状況をどう見ているのかを確認します。

例えば、

  • 「自分ではどうだったと思う?」
  • 「今、どんな状況だと思っている?」
  • 「うまくいっているところはどこ?」
  • 「一番困っているのはどこ?」

といった質問です。

目的は、店長の評価を伝える前に、本人が見ている現状を知ることです。

原因や課題を考える質問

次に、なぜその状態になっているのかを考えます。

例えば、

  • 「なぜそうなったと思う?」
  • 「どこで難しさを感じた?」
  • 「何があれば、もう少しやりやすかった?」
  • 「自分で変えられそうなところはある?」

と聞きます。

原因を決めつけず、本人がどう捉えているかを確認するための質問です。

選択肢を広げる質問

一つの答えしか見えていないときは、選択肢を増やします。

  • 「ほかに方法はありそう?」
  • 「もう一度やるなら、どんなやり方ができる?」
  • 「別の方法を考えるとしたら?」
  • 「誰かのやり方で参考になりそうなものはある?」

選択肢を増やすことで、「これしかない」という状態から少し視野を広げられます。

次の行動を決める質問

最後は行動につなげます。

  • 「では、次は何をやってみる?」
  • 「いつからやる?」
  • 「まず一つ変えるなら何にする?」
  • 「店長にサポートしてほしいことはある?」

コーチングは、良い話をして終わることが目的ではありません。

本人が考えたことを、次の行動につなげるところまで意識します。


コーチングで店長が気をつけたいこと

質問攻めにしない

質問が続きすぎると、スタッフにとっては「答えなければいけない時間」になってしまうことがあります。

コーチングは面接や尋問ではありません。

相手の答えを聞きながら、

「そう考えたんだね」

「そこが不安だったんだね」

と受け止めることも対話の一部です。

沈黙があっても、すぐに次の質問を重ねる必要はありません。

考える時間として少し待つこともできます。

正解を当てさせる質問にしない

店長のなかに正解があるのに、それを言わせるためだけに質問を続けると、

「店長が何を言ってほしいのか」

をスタッフが探すようになります。

それでは、自分で考える練習になりにくくなります。

明確に伝えるべきことがあるなら、遠回しに質問し続けるより、必要なことを伝えたほうがよい場面もあります。

店長が望む答えへ誘導しない

本人から違う意見が出てきたとき、

「でも、それって違うんじゃない?」

とすぐ修正してしまえば、自由に考えてもらう意味が薄れてしまいます。

まず、

「なぜそう思ったの?」

と理由を聞いてみる。

店長が想定していなかった視点が出てくることもあります。

もちろん、店舗のルールや安全面など、修正が必要なことは伝えます。

「本人に考えてもらうこと」と「何でも本人の判断に任せること」は別です。

知識がないことまで本人に考えさせない

ここは、特に大切にしたいポイントです。

先ほどの声が小さかった新人スタッフの例では、質問することで「商品知識への不安」が背景にあることが分かりました。

しかし、商品知識が不足していると分かったあとまで質問だけで解決しようとはしませんでした。

必要なのは商品知識を身につけることだったからです。

スタッフが答えを出せないとき、

「自分で考えようとしていない」

と決めつける前に、

そもそも考えるための材料を持っているだろうか

と見てみる必要があります。

知識がないなら教える。

経験が足りないなら、経験できる機会をつくる。

考えられるところは考えてもらう。

コーチングを使うことそのものではなく、本人の成長に必要な関わり方を選ぶことが目的です。


新人・中堅・ベテランで「教える」と「考えてもらう」を変える

新人|まず必要な知識や基本を教える

新人スタッフは、業務について知らないことが多い状態です。

「分からないことがあったら聞いてね」

と言われても、何が分からないのかさえ分からないことがあります。

その段階では、基本的な知識や手順、判断基準を店長や先輩が具体的に教える必要があります。

ただし、新人だからすべて答えを教えなければならないわけではありません。

一度教えたことについて、

「ここまでやってみて、次はどうすると思う?」

と考えてもらえる場面もあります。

中堅|質問を増やして判断する経験をつくる

基本的な業務を理解し、自分で動ける範囲が広がってきたスタッフには、少しずつ質問を増やすことができます。

「どうしたらいいですか?」

と聞かれたとき、

「あなたはどうしたらいいと思う?」

と一度返してみる。

その答えを聞いてから、必要な補足をする。

こうしたやり取りを重ねることで、知識を持っているだけでなく、自分で判断する経験を増やせます。

ベテラン|本人の判断や選択肢を尊重する

経験のあるスタッフは、店長とは違う視点や方法を持っていることがあります。

店長が先に答えを決めるより、

「どう考えてる?」

「あなたならどうする?」

と聞いたほうが、より良い方法が出てくることもあります。

本人が持っている経験を活かしながら、必要なときに店長が視点を加える。

そうした関わり方もできます。

ただし、

新人=ティーチング
中堅=半分ずつ
ベテラン=コーチング

と機械的に決めるものではありません。

同じベテランスタッフでも、初めて担当する仕事なら知識や判断材料がなく、ティーチングが必要な場合があります。

反対に新人スタッフでも、すでに理解しているテーマについては自分で考えてもらえることがあります。

見るべきなのは経験年数だけではありません。

そのテーマについて、

  • どれくらい知識があるか
  • どれくらい経験があるか
  • 判断するための材料を持っているか
  • 本人が自分で考えられる状態か

を見ることが大切です。

私は、店舗マネジメントにおけるコーチングで大切なのは、店長が上手な質問をすること以上に、目の前のスタッフが今どこまで自分で考えられるのかを見極めることだと考えています。


まとめ|コーチングは、スタッフが自分で考えられる状態をつくること

コーチングというと、質問の仕方や会話のテクニックに目が向きやすいかもしれません。

しかし、店舗マネジメントで大切なのは、質問そのものではありません。

この記事で考えてきたコーチングとは、

質問と対話を通して、本人が考え、自分なりの答えや次の行動を見つけられるよう支援すること

です。

そのためには、何でも本人に考えさせればよいわけでもありません。

考えるための材料を持っているなら、質問して考えてもらう。

材料が足りないなら、必要なことを教える。

その中間なら、質問しながら必要な知識や方法を伝える。

「教える」と「考えてもらう」のどちらが正しいかではなく、スタッフの状態に合わせて使い分けます。

そして、

自分で考える
↓
自分で次の行動を決める
↓
実践する
↓
振り返る

という経験を少しずつ重ねていく。

それが、スタッフ自身が判断して行動できる範囲を広げることにつながっていきます。

では、スタッフが自分で考え、判断できるようになってきたとき、店長は次に何を考える必要があるのでしょうか。

そこで出てくるのが、

「どこまで任せるか」

というテーマです。

考える力がついても、店長がすべての判断と仕事を抱えたままでは、スタッフが力を発揮できる範囲は広がりません。

一方で、ただ仕事を渡せばよいわけでもありません。

次回の店舗マネジメントシリーズ⑫では、スタッフへ仕事や判断を「任せる」とはどういうことなのか、権限委譲について考えていきます。

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